大人の側弯症は、こうして悪化していく
投稿日:2026年2月15日 / 最終更新日:2026年2月15日
― 角度では見えない「成れの果て」の話 ―
「側弯症はあるけれど、角度はそれほど進んでいないと言われた」
「レントゲン上は、そこまで変わっていないはずなのに、なぜか最近つらくなってきた」
60代以降の大人の側弯症の方から、
こうした声を聞くことは少なくありません。
大人の側弯症で本当に怖いのは、
角度(コブ角)が進むことだけではありません。
気づかないうちに、
「体を支える力」そのものが失われていくこと。
それが、生活の質を大きく落とす原因になります。
「角度は変わっていないのに、急に悪くなった」と感じる理由
大人の側弯症では、
・数値上の角度は大きく変わらない
・それでも、立つ・歩くが急につらくなる
ということが実際に起こります。
これは矛盾ではありません。
大人の側弯症の悪化は、
「角度の進行」ではなく、
「支え方の破綻」から始まることが多いのです。
大人の側弯症の悪化は「静かに」始まる
最初はとてもささいな変化です。
・長く立っていると疲れやすい
・以前より前かがみになりやすい
・外出が少しおっくうになる
この段階では、
多くの方が「年齢のせい」と考えます。
しかし、体の中では
少しずつ不安定さが進んでいます。
モルディック変性が起こると、何が変わるのか
“モルディック変性”とは、
椎間板と骨の境目(椎体終板)に起こる変化で、
MRIで初めて確認される所見です。
これが起こると、
・椎体終板の支持力が低下する
・痛みが出やすくなる
・微細な不安定性が生じる
といった状態になります。
側弯症がある背骨では、
もともと左右非対称な力がかかっています。
そこにモルディック変性が加わると、
不安定性が一気に表面化することがあります。
側方回旋滑りが進むと、体は「支えられなくなる」
“側方回旋滑り”とは、
背骨が横にずれながら、同時にねじれる状態です。
これは単なる「ズレ」ではなく、
三次元的な支持破綻を意味します。
この段階になると、
・体幹を安定させる支点が失われる
・姿勢を保つために、常に無理が生じる
・痛みや疲労が急激に増える
といった変化が起こります。
モルディック変性と側方回旋滑りについては、
「なぜ痛みや不安定性が急に出るのか」
「どの段階から注意が必要なのか」
前回のブログでまとめて解説しています。
▶︎ 大人の側弯症が急に悪化する背景にある
モルディック変性と側方回旋滑りについてはこちら
側弯は「後弯化」し、体は凹側に折れ込んでいく
側弯症では、
カーブの内側で体が縮んでいる方向を「凹側」、
外側に張り出している方向を「凸側」と呼びます。
悪化の過程で問題になりやすいのは、
この凹側です。
凹側では圧縮ストレスが集中しやすく、
モルディック変性や側方回旋滑りが進行すると、
体を支える力が保てなくなります。
その結果、
・局所的に後弯(前かがみ)が強まる
・凹側を支点に、体が折れ込む
・前後・左右バランスが同時に崩れる
という状態になります。
これは単なる猫背ではなく、
後弯側弯(kyphoscoliosis)と呼ばれる、
構造的な姿勢破綻です。
杖 → 歩行器 → 歩行困難 → 車いす|この流れが起こる本当の理由
大人の側弯症が進行した先では、
次のような変化が起こることがあります。
・杖がないと不安になる
・歩行器が必要になる
・外出自体が難しくなる
・車いす中心の生活になる
これは、
「筋力が落ちたから」
「運動不足だったから」
起こるわけではありません。
実際には、
背骨の支持構造が限界を迎え、
体を支え続けることができなくなった結果として起こるものです。
そのため、
「足の力はまだあるのに歩けない」
「動けるはずなのに、動かない方が楽」
という状態になります。
これは、誰にでも起こるわけではありません
ここで大切なことがあります。
この「成れの果て」は、
すべての大人の側弯症の方に起こるわけではありません。
・進行が緩やかな方
・安定した状態を保てている方
・早い段階で対策ができている方
では、この流れに入らずに済むケースも多くあります。
途中で止められる分岐点は、確かに存在します
悪化の流れには、
いくつかの分岐点があります。
・まだ体が折れ込んでいない段階
・強い不安定性が完成する前
・痛みと姿勢変化が軽度なうち
この段階で、
・角度ではなく「崩れ方」を評価する
・無理な矯正や運動を避ける
・安定を優先した保存療法を選ぶ
ことで、
流れを止められる可能性があります。
「角度」ではなく「崩れ方」を見るという視点
大人の側弯症では、
・角度だけを見て安心しない
・数字よりも、姿勢と支持を観察する
ことが重要です。
・前かがみが強くなっていないか
・凹側で支えきれなくなっていないか
・生活動作が急に落ちていないか
これらは、
角度以上に重要なサインです。
まとめ|成れの果てを知ることは、怖がるためではありません
この大人の側弯症の「成れの果て」の状態は、
不安を煽るための話ではありません。
見逃さないための話です。
大人の側弯症は、
静かに進行し、気づいたときには、
生活に大きな影響を及ぼすことがあります。
だからこそ、
角度だけに頼らず、
体の崩れ方と変化に目を向けること。
それが、
将来の選択肢を守ることにつながります。
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著者プロフィール 伊集院 博
兵庫県神戸市生まれ。千葉県千葉市在住。2007年に千葉市中央区にて伊集院鍼灸整骨院を開業。現在は千葉県で2店舗の鍼灸整骨院の代表を務め、院内にマシンピラティススタジオの併設、保育士在籍の託児所を併設するなど、独自のスタイルで運営している。
著書『ゴールデンライン 美しい姿勢をつくる44のレッスン』
ミッションは『笑顔の輪が広がる』。一人一人の患者様の笑顔を大切に、そして家族や地域に笑顔の輪が広がる活動を行っております。
主な資格と実績
- 伊集院鍼灸整骨院グループ代表
- 柔道整復師(国家資格)
- 鍼灸師(国家資格)
- ケアマネージャー
- シュロスベストプラクティスⓇ
(側弯症運動療法の資格) - 側弯症ピラティスインストラクター
- BESJ認定ピラティストレーナー
- BTA認定バレエダンサートレーナー
- ハワイ大学解剖実習終了
- 治療家大學技術講師就任








