60代以降の大人の側弯症で気をつけるべきこと
投稿日:2026年2月16日 / 最終更新日:2026年2月16日
― 進行リスクと「見逃してはいけない危険なサイン」―
側弯症は「子どもの病気」と思われがちですが、
実は60代以降に問題が表面化するケースも非常に多い疾患です。
若い頃から側弯があった方はもちろん、
「昔から少し曲がっているとは言われていたけど、特に困っていなかった」
そんな方が、60代以降になって
・急に痛みが出てきた
・背中が丸くなってきた
・身長が縮んだ気がする
・長く立ったり歩いたりするのがつらい
と感じ始めることは、決して珍しくありません。
大人の側弯症で本当に大切なのは、
「今どの段階にいるのか」を正しく知ることです。
大人の側弯症は「自然に止まる」とは限りません
成長期の側弯症と違い、
大人の側弯症は「骨が成長しないから安心」というわけではありません。
60代以降はむしろ、
・骨密度の低下
・筋力低下
・椎間板の変性
・姿勢保持能力の低下
といった要因が重なり、
構造的に進行しやすい条件がそろう年代です。
そのため、
「長年変わらなかったから、これからも大丈夫」
という考え方は、
大人の側弯症では必ずしも当てはまりません。
角度別に見る「進行リスク」の目安
側弯症の進行を考える際、
一つの目安になるのが側弯角(コブ角)です。
ただし、これはあくまで一般的な目安であり、
特に大人の側弯症では、
角度だけで安全・危険を判断することはできません。
参考として、次のように考えられています。
20度以下
角度だけを見れば、進行リスクは比較的低いケースが多い。
20〜30度
大人の側弯症では注意が必要なゾーン
体の条件によっては、進行や症状が出てくることがあります。
30度以上
進行の可能性があり、定期的な経過観察が重要になります。
60度以上
進行の可能性が高く、より慎重な評価と対応が必要な段階です。
ここで大切なのは、
「同じ角度でも、リスクは人によって大きく違う」という点です。
たとえば同じ30度でも、
・骨粗鬆症があるかどうか
・背中が丸くなり、脊椎後弯症を伴っていないか
・最近になって痛みが出てきていないか
といった条件によって、
進行や悪化のリスクは大きく変わります。
角度は一つの指標にすぎません。
大人の側弯症では、「角度+体の状態+症状」をセットで考えることが重要です。
60代以降に進行しやすくなる大きな理由|骨粗鬆症と圧迫骨折
特に女性の場合、
閉経後にエストロゲンが低下することで、骨密度が大きく下がります。
その結果、
・ちょっとした転倒
・強くぶつけた記憶がないのに
・いつの間にか背骨が潰れていた
という圧迫骨折が起こることがあります。
圧迫骨折は、
はっきりした外傷がなくても起こるため、
「気づかないまま進行している」ケースも少なくありません。
圧迫骨折が引き起こす「脊椎後弯症」という問題
圧迫骨折が起こると、
背骨(椎体)は前方が潰れ、くさび形に変形します。
これが進行すると、
・背中が丸くなる
・前かがみ姿勢が強くなる
・体を起こしても戻りにくくなる
いわゆる脊椎後弯症(円背)の状態になります。
ここで重要なのは、
「 側弯症 + 脊椎後弯症」
この組み合わせは、側弯症の進行リスクを高める
という点です。
前後方向のバランス(矢状面)が崩れると、
すでにある側弯のカーブに、
より強い負担がかかるようになります。
レントゲンでは分からない危険なサイン|モルディック変性とは
大人の側弯症で、
最近になって急に痛みが出てきたという方に、
ぜひ知っておいてほしいのが“モルディック変性 ”です。
モルディック変性とは、
・椎体終板(椎間板と骨の境目)
・椎体の骨髄部分
に起こる変化で、MRIで初めて確認できる所見です。
レントゲン検査では分かりません。
そのため、
「レントゲンでは大きな変化はないと言われたのに、痛みが強い」
というケースで、
実はモルディック変性が関与していることも少なくありません。
特にType1(炎症型)のモルディック変性では、
・動作時痛
・寝返りの痛み
・朝の強いこわばり
などを伴うことが多く、
はっきりとした痛みの原因になることがあります。
側弯症にモルディック変性が起こると、何が問題なのか
側弯症は、単なる「横の曲がり」ではありません。
・側方への弯曲
・椎体の回旋(ねじれ)
・左右非対称な荷重
という三次元的な変形です。
ここにモルディック変性が加わると、
・椎体終板の支持力が低下
・椎間板のクッション機能が落ちる
・微小な不安定性が生じる
結果として、
椎体が回旋しながら横にずれる
“側方回旋滑り”が起こるリスクが高まります。
この状態になると、
・これまでなかった痛みが出る
・立位や歩行で痛みが強くなる
・体勢によって痛みが大きく変わる
といった変化が現れやすくなります。
病院で手術を勧められるケースと、その背景
こうした状態が進行すると、
病院で手術を勧められるケースも出てきます。
これは決して不思議なことではありません。
・角度が大きい
・痛みが強く、日常生活に支障がある
・不安定性が進んでいる
こうした条件が重なると、
保存療法では対応が難しい段階に入るためです。
ただし、手術には
・身体的負担
・合併症のリスク
・術後の制限
といった現実的な問題も伴います。
大切なのは、
「手術か、何もしないか」の二択にしないことです。
保存療法の可能性と限界|運動療法は「慎重さ」が必要
「手術はできれば避けたい」
そう考える方は当然多いと思います。
ただし、
モルディック変性が出ている段階では、
運動療法はかなり注意が必要です。
よくある誤解として、
・動かせば良くなる
・筋トレで支えれば大丈夫
・インナーマッスルを鍛えれば安定する
と考えてしまうことがあります。
しかしこの段階では、
・強い回旋運動
・側屈を繰り返す運動
・不安定な体幹トレーニング
は、かえって不安定性を助長する可能性があります。
保存療法で重要なのは、
・「鍛える」ことではなく
・「これ以上ズレない環境をつくる」こと
です。
ゲンシンゲン装具・ギプスコルセットという「固定」の考え方
進行してしまっている大人の側弯症では、
・ゲンシンゲン装具
・ギプスコルセット
といった固定による保存的アプローチが
検討されることがあります。
これらは、
・すべての人に有効
・どの段階でも使える
というものではありません。
特に、
・骨粗鬆症
・脊椎後弯症
・モルディック変性
・側方回旋滑りのリスク
などがある場合、
「これ以上の変形や不安定性を助長しない」
という目的で、
固定が選択肢になるケースがあります。
重要なのは、
矯正を目的にするのではなく、
進行を抑える・負荷を減らすための固定
という位置づけです。
シュロス法・側弯症ピラティスという「エクササイズ」の立ち位置
一方で、
すべての大人の側弯症に対して、
「動かしてはいけない」というわけではありません。
シュロス法や側弯症ピラティスは、
・炎症が落ち着いている
・強い痛みが出ていない
・進行がコントロールされている
といった条件がそろえば、
有効な選択肢になり得ます。
ただし注意が必要なのは、
・強い回旋を作る
・側屈を繰り返す
・不安定な状態で体幹を鍛える
といったアプローチは、
不安定性を悪化させるリスクがあることです。
進行リスクの高い大人の側弯症に対して、ピラティスの立ち位置
当院で考える側弯症ピラティスは、
・鍛えるための運動
・見た目を良くするための運動
ではありません。
目的は、
・安定した状態の中での体幹コントロール
・矢状面(前後バランス)の改善
・呼吸機能の回復
です。
不安定な状態で無理に動かすのではなく、
「安全な範囲で、体を支える感覚を取り戻すこと」
を最優先にしています。
そうならないために大切なこと|若いうちから対策するという考え方
ここまで読んで、
「もっと早く知っていれば…」
そう感じた方もいるかもしれません。
実際、大人の側弯症は、
・若いうちからの姿勢
・骨密度の管理
・体の使い方
の積み重ねが、
60代以降に大きく影響します。
進行してからできることには、
どうしても限界があります。
だからこそ、
・若いうちから「将来の側弯症リスク」を考える
・悪化しにくい体の環境をつくる
この視点がとても重要になります。
まとめ|60代以降の大人の側弯症で見逃してはいけないこと
・側弯角(コブ角)だけで安心しない
・骨粗鬆症と圧迫骨折に注意
・脊椎後弯症の進行を放置しない
・モルディック変性は重要な危険サイン
・痛みの変化は体からの警告
大人の側弯症で一番大切なのは、
正しく知り、正しく恐れ、正しく対応することです。
必要以上に怖がる必要はありません。
でも、「何もしなくていい」と思ってしまうのも危険です。
この情報が、
ご自身の体と向き合うきっかけになれば幸いです。
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著者プロフィール 伊集院 博
兵庫県神戸市生まれ。千葉県千葉市在住。2007年に千葉市中央区にて伊集院鍼灸整骨院を開業。現在は千葉県で2店舗の鍼灸整骨院の代表を務め、院内にマシンピラティススタジオの併設、保育士在籍の託児所を併設するなど、独自のスタイルで運営している。
著書『ゴールデンライン 美しい姿勢をつくる44のレッスン』
ミッションは『笑顔の輪が広がる』。一人一人の患者様の笑顔を大切に、そして家族や地域に笑顔の輪が広がる活動を行っております。
主な資格と実績
- 伊集院鍼灸整骨院グループ代表
- 柔道整復師(国家資格)
- 鍼灸師(国家資格)
- ケアマネージャー
- シュロスベストプラクティスⓇ
(側弯症運動療法の資格) - 側弯症ピラティスインストラクター
- BESJ認定ピラティストレーナー
- BTA認定バレエダンサートレーナー
- ハワイ大学解剖実習終了
- 治療家大學技術講師就任







