側弯症の手術はしたくない…親としてできることとは?
投稿日:2025年10月14日 / 最終更新日:2025年10月14日
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側弯症のお子様をお持ちの親御様へ
こんにちは。伊集院鍼灸整骨院院長の伊集院と申します。
柔道整復師、側弯症の運動療法シュロスベストプラクティスセラピストⓇ・側弯症ピラティスインストラクターの資格を持って活動しています。
お子さんが「側弯症」と診断されたとき、多くの親御さんがまず不安になるのは、
「将来手術になるのでは?」ということではないでしょうか。
特に、病院で「様子を見ましょう」「コブ角が○度以上なら手術です」と言われると、急に現実味を帯びて、不安が押し寄せてくることでしょう。
今回は、
「できれば手術は避けたい」
「他に方法はないの?」
と考える親御さんのために、
手術の適応基準と進行リスク
手術の実態とリスク
手術を回避するためにできることをお伝えします。
手術が適応となるガイドラインとは?進行リスクを理解しよう
まず、手術の適応となる一般的な基準についてご説明します。
✅コブ角とは?
側弯症の診断に使われる「コブ角(Cobb角)」は、背骨の曲がりの角度をX線で測定したものです。
10度以上:側弯症と診断される
20〜25度:装具療法の適応になる場合あり
40〜45度以上:手術の検討対象となる(特に成長期の場合)
✅年齢と成長スパートに注意
思春期の成長期(特に女子では10歳前後)は、側弯症が進行しやすい時期です。
成長が止まる前にコブ角が40度を超えると、将来的にさらに曲がるリスクが高いため、手術を勧められることがあります。
とはいえ、「40度を超えたら必ず手術」ではありません。重要なのは、**今後どれくらい進行する可能性があるのか?**を見極めることです。
手術で本当に良くなるのか?知っておきたい再手術とリスク
手術には当然メリットもありますが、リスクもあります。親としては、その両方を冷静に知っておく必要があります。
✅側弯症の手術とは
一般的には「後方固定術」と呼ばれるもので、背骨に金属のロッドを入れて曲がりを矯正し、椎骨を骨移植で癒合させて固定します。
✅再手術のリスク:文献では約50%
海外の研究では、手術から20年以内に再手術を受ける人が約50%にのぼるというデータもあります(※出典:側弯症に関する長期追跡研究)。
これは意外と知られていません。
✅隣接椎の変形(隣接椎障害)
手術で固定した背骨の上下にある椎骨に、負担が集中して新たに側弯が出てくるケースもあります。これを「隣接椎障害」と言います。
年数が経つにつれて、腰痛や背中の張りなどの不調が出る可能性も。
✅その他のリスク
感染
神経障害
金属アレルギー
可動域の減少(体を反らせない・捻れない)
個人差はありますが可動域の減少は必ず起こります。
もちろん、すべての方にこれらが起こるわけではありませんが、
「手術すれば全て解決」ではないということは、知っておく必要があります。
手術を回避するための選択肢はある
ここからが、私たちが本当に伝えたいことです。
手術を勧められたとしても、すぐに決断する必要はありません。
成長期でまだ柔軟性がある段階なら、進行を抑えたり、角度を改善できる可能性もあります。
✅シュロスベストプラクティスⓇ(Schroth Best Practice)
ドイツ発祥の「シュロス法」は、側弯症の専門的な運動療法で、筋肉のバランスを整え、姿勢を改善する方法で、多くの高いエビデンス(科学的根拠)を有する運動療法です。
当院で行っている「シュロスベストプラクティスⓇ」では、日常生活に取り入れやすい動作・呼吸・セルフエクササイズを指導し、
ご家庭でも実践できる再現性を大切にしています。
実際に、コブ角が改善した事例や、手術を回避できたお子さんもいらっしゃいます。
✅装具療法
適切にフィッティングされた装具(コルセット)は、成長期における進行抑制に非常に有効です。
ただし、装着時間・装具の種類・生活とのバランスなど、個別の対応が重要です。
装具+運動療法の併用が特に効果的となります。
装具の種類は多数あり、装具によって有効性がかなり異なってきます。
特に側弯症の矯正力が強く有効性の高いゲンシンゲンブレースという装具をおすすめいたします。
ゲンシンゲンブレースについては別のブログで詳しくご説明いたします。
✅日常生活の注意点
・姿勢(座る姿勢・立ち方・寝方)
・歩き方
・重たい荷物やカバンを片側で持たない
・寝具(柔らかすぎる布団に注意)
・運動習慣(体幹強化・左右のバランス)
これらを意識するだけでも、進行リスクを減らすことができます。
親としてできること、伝えたいメッセージ
「うちの子に手術をさせたくない」
「でも進行するのも怖い」
そのお気持ち、痛いほど分かります。
私がこれまで関わってきた多くの親御さんも、同じような悩みを抱えていました。
中には「もっと早く知っていれば…」と後悔される方もいます。
だからこそ、今このブログを読んでくださっている親御さんには、声を大にして伝えたいのです。
🔶 早期の対策が未来を変えることがあります。
手術を完全に否定するわけではありません。必要な場面も確かにあります。
ただし、正しい知識と選択肢があることで、手術を避けられる可能性もあるのです。
・手術の前にできることがまだある
・運動療法や装具療法で改善が見込める
・親子で一緒に日常生活の改善を取り組める
そんな選択肢があることを、ぜひ知っておいてください。
最後に…
もし今、不安でいっぱいの気持ちを抱えているなら、どうか一人で悩まずに、お気軽にご相談ください。
お子さんの未来のために、今できることを一緒に考えていきましょう。
著者プロフィール 伊集院 博
兵庫県神戸市生まれ。千葉県千葉市在住。2007年に千葉市中央区にて伊集院鍼灸整骨院を開業。現在は千葉県で2店舗の鍼灸整骨院の代表を務め、院内にマシンピラティススタジオの併設、保育士在籍の託児所を併設するなど、独自のスタイルで運営している。
著書『ゴールデンライン 美しい姿勢をつくる44のレッスン』
ミッションは『笑顔の輪が広がる』。一人一人の患者様の笑顔を大切に、そして家族や地域に笑顔の輪が広がる活動を行っております。
主な資格と実績
- 伊集院鍼灸整骨院グループ代表
- 柔道整復師(国家資格)
- 鍼灸師(国家資格)
- ケアマネージャー
- BESJ認定ピラティストレーナー
- BTA認定バレエダンサートレーナー
- ハワイ大学解剖実習終了
- 治療家大學技術講師就任
