側弯症を進行させる重要な要因 「背骨のフラット化」とは?

投稿日:2026年1月19日 / 最終更新日:2026年1月21日

― 背骨が平らになることで何が問題なのか ―

 

側弯症というと「背骨が横に曲がる病気」という印象を持つ方が多いかもしれません。

しかし実際には、側弯症では横の曲がり以上に重要な変化が起こっています。

 

それが、脊柱のフラット化です。

 

フラット化とは、本来あるはずの背骨の前後のカーブが減少し、

背骨全体が平らに近づいてしまう状態を指します。

この変化は見た目だけでなく、身体の機能や側弯症の進行にも深く関係しています。

 

 

正常な背骨は生理的S字カーブを持っている

 

健康な背骨は、

 

・首(頸椎)は前に反る

 

・背中(胸椎)は後ろに丸まる

 

・腰(腰椎)は前に反る

 

という生理的S字カーブを持っています。

 

この構造によって、私たちは少ない力で立ち、

歩行やジャンプ時の衝撃をうまく吸収することができます。

 

 

側弯症は三次元的変形が起こっています

 

側弯症では、背骨が単純に横へ曲がるだけではありません。

 

・側方へのずれ

 

・回旋(ねじれ)

 

・前後方向への移動

 

といった三次元的な変形が同時に起こります。

 

この影響で、前後の生理的S字カーブを維持できなくなり

結果として脊柱のフラット化(背骨全体が平らに近づいてしまう状態)が生じます。

これは姿勢の癖ではなく、構造的な問題です。

 

 

脊柱がフラット化することで起こる問題点

 

衝撃吸収能力が低下する

 

S字カーブは、背骨にかかる衝撃を分散させる役割を担っています。

フラット化するとこの機能が弱まり、

 

・歩行時の衝撃

 

・日常動作の負担

 

が直接、椎間板や椎体に伝わりやすくなります。

 

 

筋肉が常に緊張しやすくなる

 

背骨が平らになると、重心を保つために

筋肉が常に働き続けなければなりません。

 

その結果、

 

・肩こり

 

・背中の張り

 

・腰の痛み

 

・疲れやすさ

 

といった症状が起こりやすくなります。

側弯症では左右差も加わるため、特定の筋肉に負担が集中しやすいのが特徴です。

 

 

呼吸が浅くなりやすい

 

胸椎の丸みが減少すると、肋骨の動きも制限されます。

 

・胸が広がりにくい

 

・呼吸が浅くなる

 

・運動時に息切れする

 

といった変化が起こることもあります。

 

 

フラット化が側弯症の進行を助長する理由

 

ここからが今回の重要な内容となります。

 

脊柱がフラット化すると、背骨全体の「適合性」が緩みやすくなります。

適合性とは、椎骨同士が本来のカーブの中で安定し、互いに支え合っている状態のことです。

 

健康な背骨では、前後のカーブによって

それぞれの椎骨が噛み合うように配置され、

横方向へのズレや変形に対してブレーキがかかっています。

 

しかしフラット化が進むと、この噛み合いが弱くなり、

背骨は「曲がりやすく、戻りにくい構造」へと変化してしまいます。

 

つまりフラット化は、側弯症の進行因子になるということです。

 

特に問題となるのが、胸腰椎移行部(胸椎と腰椎の境目)のフラット化です。

 

この部位が平らになると、腰椎は本来の前弯を保てなくなり、

腰を丸める方向、つまり後弯方向へと誘導されやすくなります。

 

ここで整理すると、

 

後弯(背中や腰が丸くなる状態)を

カイホーシス(kyphosis)

 

前弯(腰が前に反る状態)を

ロードシス(lordosis)

 

と呼びます。

 

側弯症の方にとって重要なのは、

ロードシスを保つことです。

 

腰椎の前弯(ロードシス)が保たれていると、

背骨全体の立体的な安定性が高まり、

側方への変形に対する抵抗力が働きます。

 

一方で、フラット化が進みカイホーシス姿勢が強くなると、

背骨の適合性はさらに緩み、

側弯症のカーブが進行しやすい状態になります。

 

ただし現実的には、

側弯症の方ほどカイホーシス姿勢の方が楽に感じやすいのも事実です。

 

腰を丸めた姿勢は一時的に筋緊張が抜けるため、

無意識のうちにその姿勢を選びやすくなります。

 

だからこそ、

側弯症では「楽な姿勢」ではなく、

構造的に必要な腰椎の前弯(ロードシス)を意識することが重要になります。

 

フラット化を理解し、

前弯を保つ意識とアプローチができるかどうかが、

側弯症の進行を左右する大きな分かれ目になるのです。

 

 

保存療法では、背骨の変形を3D(3次元的変化)の視点でとらえることが重要

 

側弯症の評価ではCobb角が注目されがちですが、

フラット化を無視してしまうと、

 

見た目は少し改善しても、

構造的な問題が残るということが起こります。

 

したがって、

 

・側弯症の進行を加速させる

 

・筋緊張が起こるため、肩こり、背部痛、腰痛

 

・疲れやすさや息苦しさ

 

このような問題が起こりやすくなります。

 

ですから保存療法では、

 

・横の曲がり

 

・ねじれ

 

・前後カーブの減少

 

を同時に捉える3D(3次元的変化)の視点が欠かせません。

 

脊柱を3Dで捉える保存療法「シュロス法」という考え方

このように、側弯症の保存療法では、背骨の変形を3D(3次元的変化)の視点で捉えることが欠かせません。

その代表的な運動療法が、シュロス法です。

シュロス法は、側弯症を単なる「横の曲がり」としてではなく、
横方向の弯曲・回旋(ねじれ)・前後カーブの変化が組み合わさった三次元変形として捉えます。

そのため、シュロス法では、

・体の向き

・呼吸の入れ方

・姿勢の取り方

を細かく調整しながら、
背骨と体幹を立体的に再教育していきます。

中でも、近年注目されている「シュロスベストプラクティス®」は、
従来の考え方を整理し、より再現性と安全性を高めたアプローチです。

横のカーブだけでなく、

フラット化した前後カーブをどう再構築するか、

回旋した体幹をどう立体的に整えるか、

こうした点を重視しているのが大きな特徴です。

側弯症の保存療法で「3Dの視点」が重要と言われる理由は、

まさにこのシュロス法の考え方に集約されています。

 

まとめ:脊柱のフラット化を理解することが第一歩

 

脊柱のフラット化は、

 

・なぜ疲れやすいのか

 

・なぜ痛みが出やすいのか

 

・なぜ側弯症が進行しやすいのか

 

といった疑問を理解するための重要なキーワードです。

 

側弯症は「横の曲がり」だけの問題ではありません。

 

背骨全体の立体構造の破綻として捉えることが、

正しい理解と最善の選択につながります。

 

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著者プロフィール 伊集院 博

兵庫県神戸市生まれ。千葉県千葉市在住。2007年に千葉市中央区にて伊集院鍼灸整骨院を開業。現在は千葉県で2店舗の鍼灸整骨院の代表を務め、院内にマシンピラティススタジオの併設、保育士在籍の託児所を併設するなど、独自のスタイルで運営している。
著書『ゴールデンライン 美しい姿勢をつくる44のレッスン』
ミッションは『笑顔の輪が広がる』。一人一人の患者様の笑顔を大切に、そして家族や地域に笑顔の輪が広がる活動を行っております。

主な資格と実績

  • 伊集院鍼灸整骨院グループ代表
  • 柔道整復師(国家資格)
  • 鍼灸師(国家資格)
  • ケアマネージャー
  • シュロスベストプラクティスⓇ
    (側弯症運動療法の資格)
  • 側弯症ピラティスインストラクター
  • BESJ認定ピラティストレーナー
  • BTA認定バレエダンサートレーナー
  • ハワイ大学解剖実習終了
  • 治療家大學技術講師就任
ゴールデンライン 美しい姿勢をつくる44のレッスン

院長の伊集院が姿勢の問題を抱える女性に向けた著書

「ゴールデンライン 美しい姿勢をつくる44のレッスン」を出版。

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