かかとをついてしゃがめない方へ|足首の硬さが、膝や股関節、足の痛みに影響していることがあります
投稿日:2026年3月22日 / 最終更新日:2026年3月22日
「しゃがむとかかとが浮いてしまう」
「しゃがむと後ろに倒れそうになる」
「足首が硬いと言われたことがある」
「子どもの頃からしゃがめない」
このような経験はありませんか?
年齢のせい、体が硬い体質、運動不足だから仕方ない――
そう思っている方も多いかもしれません。
しかし実はその背景に、足首の動きの制限(背屈制限)が隠れていることがあります。
そしてその足首の硬さが、膝や股関節、さらには足の変形や痛みにつながっているケースも少なくありません。
足首の「背屈制限」とは何か?
背屈(はいくつ)とは、つま先を上に持ち上げる動きのことです。
しゃがむ動作では、足首がしっかり曲がる必要があります。
本来、しゃがむときには
・脛骨(スネの骨)が前へ倒れ
・足首が曲がり
・距骨(足首の中心の骨)が後ろへ滑り込む
という動きが起こります。
ところが、足首がうまく曲がらないと、
・かかとが浮く
・膝が内側へ入る
・体が前に倒れる
といった代償動作が起こります。
背屈制限は単に「ふくらはぎが硬い」という問題だけではありません。
特に多いのが、過去の内返し捻挫(足首を内側にひねる捻挫)の影響です。
捻挫をすると、前距腓靭帯という靭帯が緩んだり、関節包が硬くなったり、距骨がわずかに前方へずれた状態になることがあります。
その結果、
「不安定なのに動きは硬い」
という矛盾した状態が起こります。これが慢性的な背屈制限につながるのです。
このような状態は、いわゆる慢性足関節不安定症(CAI)と関連していることもあります。
捻挫を繰り返している方や、足首に不安感がある方は、こちらの記事も参考にしてください。
足首が硬いと、足の形が崩れやすくなります
足首が十分に背屈できないと、身体はどこかでその動きを補おうとします。
そのとき多く見られるのが、足の内側が潰れる動き(回内)です。
・かかとが外側に倒れる
・土踏まずが落ちる
・足首全体が内側へ崩れる
これがいわゆる扁平足傾向です。
扁平足については、足の構造や痛みとの関係を別の記事で詳しく解説しています。
気になる方はあわせてご覧ください。
足首が内側へ崩れると、親指側に負担が集中します。その結果、
・母趾の付け根にストレスがかかる
・親指が外側へ引っ張られる
といった状態が続き、外反母趾が進行しやすくなります。
外反母趾は「靴のせい」と思われがちですが、実際には足首の動きの問題が背景にあることも多いのです。
さらに、足首で動きを吸収できない分、前足部(足の指側)が過剰に動きます。
これが、
・足底腱膜炎
・モートン病
・指の付け根の痛み
などにつながることもあります。
それぞれの症状には特徴的な原因や進行パターンがあります。
詳しくは以下の記事で解説していますので、気になる症状がある方は参考にしてみてください。
膝や股関節の痛みとの関係
中高年女性では、もともと膝がやや内側に入りやすい傾向があります。
女性は骨盤の幅が広いため、股関節から膝へ向かう角度(Qアングル)が男性より大きいためです。
そこに足首の背屈制限が加わると、
しゃがむ
↓
かかとが浮きそうになる
↓
膝が内側へ入る(ニーイン)
↓
股関節が内側へねじれる
という動きが起こります。
この状態が続くと、
・膝の内側の痛み
・膝のお皿周囲へのストレス
・変形性膝関節症の進行
・股関節前面の詰まり
・お尻のこりや痛み
といった不調につながることがあります。
「股関節が硬い」「膝が悪い」と思っていても、実は足首が根本原因だったというケースは少なくありません。
もちろん、変形そのものの進行が関係している場合もありますが、足首の機能が影響していることもあります。
変形性膝関節症や変形性股関節症については、別の記事で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
昔からしゃがめない人も、あきらめなくていい
「子どもの頃からしゃがめないんです」
こうおっしゃる方は本当に多いです。
体質だから仕方ない、と思っている方もいらっしゃいますが、
実際にはふくらはぎの硬さや、成長期の捻挫、これまでの運動習慣などが影響していることがあります。
また、足首の中で距骨がうまく滑らない状態(滑走不全)が関係している場合もあります。
構造的な問題であれば、適切なアプローチを行うことで改善が期待できます。
当院での評価方法
当院では、
・仰向けでの足関節可動域評価
・ランジテスト(壁から約10cmが目安)
・傾斜計を用いた角度測定
などを行い、客観的に状態を確認します。
「どのくらい硬いのか」
「どの方向に制限があるのか」
を明確にすることで、適切な施術方針を立てます。
背屈制限へのアプローチ
当院での治療の目的は、距骨の後方滑りを取り戻すことです。
背屈制限の多くは、単なる筋肉の硬さだけでなく、
距骨が本来の位置へ滑り込めない状態が関係しています。
距骨が後方へ滑れないまま無理に背屈しようとすると、
足は内側へ崩れやすくなり、
膝や股関節にまで負担が広がっていきます。
そのため施術は、
「距骨が後ろへ滑れる環境を整えること」
を軸に組み立てます。
具体的には、
・持続的なストレッチでふくらはぎの緊張を緩める
・前脛骨筋や足関節周囲筋の過緊張を調整する
・距骨の後方滑りを促す関節モビライゼーション
・後方滑りを保持するためのテーピング
・必要に応じて衝撃波やラジオ波などの物理療法で関節周囲の滑走を改善する
・過回内が強い場合はインソールで支持性を高める
といった方法を用います。
重要なのは、
痛みが出ている膝や股関節だけを施術するのではなく、
身体の土台である足首の機能を回復させることです。
足首は身体の土台です
足首は、身体を支える土台です。
土台が不安定だったり、十分に動かなかったりすると、その上にある膝や股関節、骨盤に負担がかかります。
もし、
・しゃがむときにかかとが浮く
・外反母趾が気になる
・足底腱膜炎がなかなか改善しない
・膝や股関節の痛みが続いている
といった症状があるなら、一度「足首の動き」を見直してみることをおすすめします。
足首が変わると、身体の使い方が変わります。
「もう年だから」とあきらめる前に、まずは足元から整えてみませんか。
著者プロフィール 伊集院 博
兵庫県神戸市生まれ。千葉県千葉市在住。2007年に千葉市中央区にて伊集院鍼灸整骨院を開業。現在は千葉県で2店舗の鍼灸整骨院の代表を務め、院内にマシンピラティススタジオの併設、保育士在籍の託児所を併設するなど、独自のスタイルで運営している。
著書『ゴールデンライン 美しい姿勢をつくる44のレッスン』
ミッションは『笑顔の輪が広がる』。一人一人の患者様の笑顔を大切に、そして家族や地域に笑顔の輪が広がる活動を行っております。
主な資格と実績
- 伊集院鍼灸整骨院グループ代表
- 柔道整復師(国家資格)
- 鍼灸師(国家資格)
- ケアマネージャー
- シュロスベストプラクティスⓇ
(側弯症運動療法の資格) - 側弯症ピラティスインストラクター
- BESJ認定ピラティストレーナー
- BTA認定バレエダンサートレーナー
- ハワイ大学解剖実習終了
- 治療家大學技術講師就任









