68歳で初めて側弯症を指摘されました|高齢者の膝痛と背骨の左右差

投稿日:2026年3月5日 / 最終更新日:2026年3月6日

― 子どもの頃に始まった側弯症が、高齢期まで気づかれないこともあります ―

当院に側弯症の治療で通われている患者様のご紹介で、

68歳のお母様が来院されました。

主訴は両膝の痛みです。

これまで膝痛や腰痛で整形外科へ通院歴があり、

現在も整骨院へ通われています。

しかし、側弯症については

「一度も言われたことがない」とのことでした。

実はこのように、60代・70代で初めて側弯症を指摘されるケースは珍しくありません。

また、側弯症には遺伝的な素因が関与している可能性が指摘されています。

顔立ちや体格、姿勢の癖が親子で似ることがあるように、

背骨の形状や体幹バランスにも共通点が見られることがあります。

実際、今回も側弯症で通院されている患者様のお母様でした。

もちろん、すべてが遺伝で決まるわけではありませんが、

家族に側弯症の方がいる場合は、体幹の左右差に注意しておくことも大切です。

評価で分かったこと

姿勢評価と前屈テスト(アダムステスト)の結果、

・胸椎メインカーブ 右凸右回旋(ATR13°)

・リブハンプあり(身体を前屈した際の右背中の盛り上がり)

・腰椎セカンドカーブ 左凸左回旋(ATR3°)

・頚胸椎 左凸左回旋(ATR3°)

・左肩挙上

・頭部右傾

・左骨盤挙上

胸椎のカーブが明確で回旋を伴っていることから、

思春期に発症しそのまま経過してきた**大人の側弯症(AIS経過型)**の可能性が高いと考えられます。

側弯症というと成長期の問題という印象がありますが、

高齢者の側弯症は決して珍しいものではありません。

※ATRとは体幹の捻じれの角度で、一般的に5°以上で側弯症の疑いがあるとされています。

ご本人は“気づいていた”

・昔から左肩が上がっている

・頭が右に傾いているとよく言われる

・美容室で毎回頭の位置を直される

・腰の高さが左右で違う

しかしそれを「体質」と受け止めていたそうです。

実際、大人の側弯症は痛みが出ない限り見逃されやすい傾向があります。

側弯症と膝痛の関係

今回の主訴は両膝の痛みでした。

一見すると側弯症と膝痛は無関係に思えるかもしれません。

しかし、側弯症による体幹の左右差が下肢アライメントに影響することがあります。

左膝について

左骨盤が挙上しているため、左股関節は内転位傾向になります。

この状態で膝を屈曲(曲げる)すると、

・股関節内転位

・大腿骨内転・内旋(内側に捻じれる)

・下腿骨は相対的に外旋(外側に捻じれる)

という“捻じれストレス”が生じやすくなります。

実際にステップ動作(一歩前に踏み出す動作)では強い「ニーイン・トゥーアウト」が確認されました。

ニーイン・トゥーアウトとは、片足を一歩前に踏み出す動作をした際に、

膝のお皿が内側へ向き、つま先が外側を向いている状態。

これは左膝への慢性的な回旋ストレス(捻じれ)を示唆します。

右膝について

胸椎メインカーブ右凸により、

体幹が右へ偏位している可能性があります。

その結果、右足荷重が増え、

右膝への圧縮ストレスが強くなっていた可能性が考えられます。

つまり、

左膝は“ねじれ”

右膝は“荷重”

という異なるメカニズムで負担がかかっている可能性がありました。

このように、側弯症と膝痛が間接的に関係するケースも存在します。

60代・70代の側弯症で考えるべきこと

高齢者の側弯症では、

加齢変化が加わることで新たなリスクが生じることがあります。

70代、80代になると骨粗鬆症が進行する可能性があります。

骨密度が低下すると椎体圧迫骨折のリスクが高まります。

側弯症がある背骨では荷重が偏っているため、

特定部位への負担が集中しやすくなることがあります。

また、

・腰椎すべり症

・脊柱管狭窄症

などの変性疾患が重なる可能性もあります。

さらに側弯症の方は体幹バランスを保つため、

無意識に姿勢を調整しています。

その結果、

・フラットバック(腰椎後弯)

・体幹前傾

・回旋を伴う姿勢崩れ

が進行する可能性もあります。

強い椎体終板変性(モディック変性)が起こると、

激しい腰痛につながるケースもあります。

ただし、これは“未来予測”であり、

必ず起こるものではありません。

進行リスクと見逃してはいけない危険なサインについて

👉 60代以降の大人の側弯症で気をつけるべきことをこちらの記事で解説しています。

大切なのは“今からの管理”

高齢者の側弯症で重要なのは、

・骨密度の管理

・体幹筋力の維持

・姿勢コントロール

・左右荷重バランスの理解

です。

側弯症は年齢に関係なく評価する価値があります。

誰かが悪いわけではない

膝が痛ければ膝を診る。

腰が痛ければ腰を診る。

それが通常の医療の流れです。

しかし、全体構造を評価することで、

背景が見えることもあります。

重要なのは責任を探すことではなく、

構造を理解することです。

初診時の対応

初診時は、

・両膝への施術

・側弯症を考慮した座り方、立位姿勢、横になる時の姿勢の指導

を行いました。

「治す」だけではなく、

「負担を減らす」という視点も大切にしています。

まとめ

側弯症は子どもだけの問題ではありません。

60代・70代になって初めて分かるケースもあります。

膝痛や腰痛の背景に、

長年気づかれなかった側弯症が関係していることもあります。

恐れるのではなく、理解すること。

そして今できることを積み重ねていくこと。

それが高齢者の側弯症と向き合う第一歩です。

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著者プロフィール 伊集院 博

兵庫県神戸市生まれ。千葉県千葉市在住。2007年に千葉市中央区にて伊集院鍼灸整骨院を開業。現在は千葉県で2店舗の鍼灸整骨院の代表を務め、院内にマシンピラティススタジオの併設、保育士在籍の託児所を併設するなど、独自のスタイルで運営している。
著書『ゴールデンライン 美しい姿勢をつくる44のレッスン』
ミッションは『笑顔の輪が広がる』。一人一人の患者様の笑顔を大切に、そして家族や地域に笑顔の輪が広がる活動を行っております。

主な資格と実績

  • 伊集院鍼灸整骨院グループ代表
  • 柔道整復師(国家資格)
  • 鍼灸師(国家資格)
  • ケアマネージャー
  • シュロスベストプラクティスⓇ
    (側弯症運動療法の資格)
  • 側弯症ピラティスインストラクター
  • BESJ認定ピラティストレーナー
  • BTA認定バレエダンサートレーナー
  • ハワイ大学解剖実習終了
  • 治療家大學技術講師就任
ゴールデンライン 美しい姿勢をつくる44のレッスン

院長の伊集院が姿勢の問題を抱える女性に向けた著書

「ゴールデンライン 美しい姿勢をつくる44のレッスン」を出版。

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